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COLUMN

痛くない治療と絆創膏

先日、薬局で絆創膏(ばんそうこう)を購入する機会がありました。

これは、ジョンソン・エンド・ジョンソン社が出しているバンドエイド キズパワーパッド(2004年3月に発売になった市場初の湿潤療法用の絆創膏)です。
ハイドロコロイド材という特殊な素材でできていて、傷口からの滲出液で素材が溶けてドロドロ状態になって、治癒に最適な湿潤環境を保つというものです。
今回はこれを購入しました。

ところで、もう10年くらいも経ちますが、従来のガーゼを使用している絆創膏と、最近のハイドロコロイド材を使用した絆創膏の2種類が売っているのをご存じですか?
一つは、昔ながらの消毒して貼るという考えの絆創膏。
そして、新しい方は、湿潤療法用(モイストヒーリング)の絆創膏です。

湿潤療法は、「消毒しない」「水道水でよく洗う」「乾かさずに覆う」で行う治療法です。
私も10年ほど前に港区歯科医師会の勉強会で、湿潤療法の講演を聴いて大変に感銘をうけました。

すり傷・きり傷・ヤケドなどの傷は、血液や泥などの異物をよく洗った後、ハイドロコロイド素材を当てて、乾かさないようにする。
そうすると、痛みがなく早く治る。
しかも、傷跡が残りにくいという考え方です。

傷が治癒するためには以下のことが起こります。

血管が壊れ出血しているため,血小板が集まり止血する。血管は収縮し,止血を助ける。
同時に,血小板より血小板由来成長因子,上皮成長因子が放出される。
収縮していた血管が拡張し毛細血管の透過性が亢進。白血球が組織内に遊走し細菌を殺す。
マクロファージが創内に進入し壊死組織などを除去。
マクロファージが各種成長因子(血管新生,線維芽細胞活性化,コラーゲン生成などを助ける)を放出。
24~48時間で上皮細胞が創面を覆う。
線維芽細胞が,コラーゲン,基質などを生成。
毛細血管が増殖
なぜ、消毒やガーゼはいけないのか?

傷が治る過程には、傷からしみ出てくる体液(滲出液)に含まれる細胞の成長因子という成分が重要ということ。
ガーゼを当てると、せっかくの滲出液が吸収され乾いてしまうので、治癒が遅れます。
また、傷により欠損した皮膚は、傷の中を上皮細胞(表皮になる細胞)が増殖・移動することで再生します。
このとき、湿った環境にある方が、自身の傷を治す細胞が活動しやすいので、皮膚が早く再生されます。

消毒については、細菌だけでなく、傷口を治すのに必要な自分の細胞にダメージしてしまう問題です。

「消毒をしなくて本当に大丈夫?」と心配な人もいるでしょうが、傷口に感染を起こすためには多大な量の細菌が必要です。そして自身の細胞にはちゃんと免疫作用があり細菌感染を防ぎます。
ですから通常は、水道水でよく洗い流して菌を減らせば十分です。
新しい絆創膏は、この新しい湿潤療法を使うことを前提にして使用する絆創膏なのです。
ですから、使用方法や注意事項をよく読んで使ってください。

医学も歯学も常に進化し続けています。
歯やお口のことも、諦めずに歯医者で相談してみて下さい。
きっとお役に立てると思います。

医師プロフィール

阿部 洋太郎

日本大学松戸歯学部を卒業後、歯科保存学入局
千葉県の歯科医院、都内の歯科医院にて勤務
松島歯科・新橋インプラントオフィスにて副院長およびインプラントオフィス所長を兼務
日本大学大学院松戸歯学研究科を卒業
(インプラントと口腔粘膜病変の研究、コラーゲンとエラスチンの研究、カンジダと癌の研究)

審美歯科、ラミネートベニアを専門的に行っており、日本各地や海外からのご来院にも対応している

詳しい経歴や医師の想いについては、医師の紹介ページをご覧ください。