歯周病が全身に及ぼす影響についてです。
これについて必要以上に怖がることはないですが、正しい知識を持って適切に予防・治療をしていくことが大切だと思います。
歯周病は、細菌が歯と歯肉の間に入り込み、歯周組織が破壊され歯肉が弱ったり、歯を支えている骨が侵される病気です。
口臭の主な原因でもありますし、歯を抜歯する一番の誘因でもあります。
インプラント治療にも悪影響を起こしますし、審美障害にもつながります。
そして、これは細菌感染する病気です。
人から人へも移りますし、歯ぐきに炎症を起こした病原菌や炎症性物質が血管に入り、体内を移動すると各所で病気を引き起こし、深刻な病の引き金になる可能性もあります。
①脳卒中
歯周病になると歯周病菌が「プロテアーゼ」という酵素を出し、血しょうを固まらせます。
そして血管をつまらせ、動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞の引き金になることもあります。
②肺病
歯周病菌の混じった唾液が誤って肺に入ると肺炎の原因となります。
誤嚥性肺炎は直接の死因になることがあります。
③心臓病
歯周病菌が心臓弁への感染を引き起こし心臓病の原因となることもわかつています。
また、動脈硬化を引き起こすことから心筋梗塞の一因ともなりえます。
アメリカでは「フロスorダイ」(フロスをするか死ぬか)といわれるほどで、歯周病の人は健康な人の28倍も心臓病になりやすいというデータがあります。
④糖尿病
歯周病のある人ほど血糖値が高い傾向があり、重症な歯周病患者には糖尿病の患者が多いということが解っています。
また、歯周病が改善されると血糖値も下がるというデータが報告されています。
歯周病と糖尿病との関係はとても強いと言われています。
⑤未熟児出産・早産
歯周病の母親の未熟児出産は、健康な人の7倍も高くなり早産の確率も高くなります。
日頃の歯周病ケアも大切ですが、妊婦さんの口腔ケアも大切です。
⑥ガン
日本人の死因のトップであるガンですが、歯周病がある人は健康な人より14%もガンになる確率が高いということが発表されています。
歯周病はいわゆる生活習慣病の一種ですが、他の生活習慣病を悪化させると言われています。
私も、ある大学教授の講演で「脂肪性肝炎の肝臓内から歯周病菌が観察された」との研究報告を聴いたことがありますが、その病理組織像を見て歯周病菌の悪影響について強いインパクトを受けました。
歯周病菌は全身に影響を及ぼすと考えられます。
死因のワースト3の病気がそれぞれ歯周病と関連すると言われています。
口は体の入り口です、我々歯科医師は健康のためにも口腔ケアを大切にします。
医師プロフィール
阿部 洋太郎
日本大学松戸歯学部を卒業後、歯科保存学入局
千葉県の歯科医院、都内の歯科医院にて勤務
松島歯科・新橋インプラントオフィスにて副院長およびインプラントオフィス所長を兼務
日本大学大学院松戸歯学研究科を卒業
(インプラントと口腔粘膜病変の研究、コラーゲンとエラスチンの研究、カンジダと癌の研究)
審美歯科、ラミネートベニアを専門的に行っており、日本各地や海外からのご来院にも対応している
詳しい経歴や医師の想いについては、医師の紹介ページをご覧ください。